退職後の住民税と国民年金はどうなる?『忘れた頃に届く請求』で慌てないための手続きを社労士が解説

「会社を辞めてしばらくしたら、住民税の通知が届いて金額に驚いた」「年金の手続きを何もしていなかったら、納付書や督促状が届いた」——退職後の相談で、こうした声をよく耳にします。

在職中は、住民税も年金保険料も給与から天引きされていたため、自分で手続きや支払いをする機会がほとんどありません。そのため、退職後に「自分で払う」側に切り替わったことに気づかず、あとから請求が届いて慌ててしまう方が少なくないのです。心身が疲れ切った状態で退職した方にとって、こうした「忘れた頃に届く請求」は大きな不安の種になります。

この記事では、社会保険労務士の立場から、退職後の住民税と国民年金の仕組み、必要な手続き、そして支払いが難しいときに使える制度について解説します。あらかじめ流れを知っておくだけで、退職後の不安はぐっと小さくなります。

なぜ退職後に「住民税」と「年金」の請求が届くのか

在職中と退職後とでは、住民税と年金の支払い方が次のように変わります。

項目 在職中 退職後(次の就職まで期間が空く場合)
住民税 給与から天引き(特別徴収) 退職時に一括で差し引かれるか、自分で納付(普通徴収)
年金 厚生年金保険料を給与から天引き 国民年金に切り替え、保険料を自分で納付
健康保険 会社の健康保険の保険料を給与から天引き 任意継続・国民健康保険・家族の扶養のいずれかを選択

特に住民税は、「前年の所得」に対して課税される仕組みです。そのため、退職して収入がなくなったあとでも、在職中に得ていた所得にもとづく住民税の支払いが続きます。「収入がないのに請求が来る」と感じるのは、このタイムラグが原因です。

なお、健康保険の切り替えも、住民税・年金と同じく退職後の大切な手続きです。期限があるため、次の2点は特に押さえておきましょう。

  • 任意継続は「20日以内」:退職前の健康保険を最長2年間継続する「任意継続」を選ぶ場合は、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申請する必要があります。期限を過ぎると原則として加入できません。
  • 会社都合などで退職した場合の国民健康保険料の軽減:倒産・解雇などによる離職(特定受給資格者)や、正当な理由のある自己都合離職(特定理由離職者)で、離職時に65歳未満の方は、国民健康保険料の計算で前年の給与所得を30/100とみなす軽減措置を受けられます。申請には雇用保険受給資格者証などが必要です。

ここからは、住民税と年金に絞って解説します。

社労士が解説:退職後の住民税の仕組みと支払い方法

住民税は「前年の所得」に対して、6月から翌年5月までの1年間で納める

住民税(市町村民税・道府県民税)は、前年1月から12月までの所得をもとに税額が決まり、その年の6月から翌年5月までの1年間で納める仕組みです。在職中は、この税額を12回に分けて毎月の給与から天引きする「特別徴収」が行われています。

退職すると給与からの天引きができなくなるため、残りの住民税をどのように納めるかが、退職する時期によって次のように変わります(地方税法第321条の5)。

退職する時期 残りの住民税の扱い
1月1日〜4月30日 5月分までの残りの税額を、最後の給与や退職金から一括で差し引く(一括徴収)。本人の希望にかかわらず一括徴収が原則で、給与・退職金の額が残りの税額に満たない場合などに限り普通徴収となる
5月中 最後の給与から5月分が差し引かれ、その年度(6月〜翌年5月)の住民税は納め終わる。実質的には1月〜4月の退職と同様、給与からの徴収で完了する
6月1日〜12月31日 原則として、残りの税額は自分で納付書で納める「普通徴収」に切り替わる。本人が希望すれば、最後の給与や退職金から残りの税額を一括で差し引いてもらうことも可能

1月〜4月に退職した場合は、最後の給与から数か月分の住民税がまとめて差し引かれるため、「最後の給与の手取りが想像よりかなり少なかった」と驚く方もいます。あらかじめ知っておくと、退職後の資金計画が立てやすくなります。なお、退職後に収入が大きく減って支払いが難しくなった場合は、市区町村の窓口で徴収猶予や減免について相談できます(詳しくは後述します)。

普通徴収に切り替わると、自宅に「納税通知書」が届く

6月以降に退職して普通徴収に切り替わった場合は、お住まいの市区町村から自宅に納税通知書と納付書が届きます。納付の時期や回数は自治体によって異なりますが、残りの税額を数回に分けて納めるのが一般的です。金融機関やコンビニのほか、自治体によってはスマートフォン決済やクレジットカードでも納付できます。

退職した翌年にも、住民税の請求は届く

注意しておきたいのが、退職した年の所得に対する住民税です。たとえば、ある年の10月に退職した場合、その年の1月から9月までに得た所得に対する住民税が、翌年6月から課税されます。退職後に収入が大きく減っていても、翌年の住民税は在職中の所得にもとづいて計算されるため、「無職なのに住民税の通知が届いた」という状況が生じます。

退職後すぐに次の仕事が決まらない場合は、翌年分の住民税もあらかじめ見込んでおくと安心です。

転職先が決まっている場合は、特別徴収を引き継げることもある

退職後すぐに次の会社で働き始める場合は、前の会社と新しい会社の間で手続きを行うことで、新しい会社の給与から住民税の天引きを続けられる場合があります。希望する場合は、退職時に会社へその旨を伝えておくとスムーズです。

社労士が解説:退職後の国民年金の切り替えと免除制度

次の就職まで期間が空くなら「国民年金」への切り替えが必要

会社員は厚生年金に加入しており、国民年金の「第2号被保険者」という扱いです。退職すると、退職日の翌日に厚生年金の資格を失います。次の就職まで期間が空く場合、20歳以上60歳未満の方は、国民年金の「第1号被保険者」への切り替え手続きを、退職日の翌日から14日以内に行う必要があります(国民年金法にもとづく届出義務)。

退職後の状況 必要な手続き
すぐに次の会社で厚生年金に加入する 新しい会社が手続きを行うため、本人の手続きは原則不要
次の就職まで期間が空く(第1号被保険者) 退職日の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村の窓口で種別変更の届出を行う(マイナポータルから電子申請できる場合もある)
会社員・公務員の配偶者に扶養される(第3号被保険者) 配偶者の勤務先を通じて届出を行う(収入などの要件あり)

手続きの際は、基礎年金番号がわかるもの(基礎年金番号通知書や年金手帳、マイナンバーカード)と、退職日がわかる書類(離職票や健康保険の資格喪失証明書など)を用意しておくとスムーズです。必要書類は自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

国民年金の保険料は「月単位」でかかる

国民年金の保険料は定額で、年度ごとに金額が改定されます(令和7年度は月額17,510円)。納付期限は原則として翌月末です。

また、厚生年金の保険料は「資格を失った月の前月分」までかかる仕組みのため、月末に退職するか、月の途中で退職するかによって、退職した月の年金が厚生年金になるか国民年金になるかが変わります。退職日を決める際には、この点も頭に入れておくとよいでしょう。

手続きをしないまま放置するリスク

切り替えの手続きをしないままでいると、日本年金機構から加入を促す通知が届くほか、保険料を納めない期間が続くと督促の対象となることがあります。また、未納のままにしておくと、将来の老齢基礎年金が減るだけでなく、万が一病気やけがで障害が残った場合の障害基礎年金を受け取れなくなるおそれもあります。

年金は「老後のため」だけの制度ではなく、病気やけがのときに自分の生活を守る保険でもあります。保険料の支払いが難しい場合でも、未納のまま放置せず、次に説明する免除・猶予制度の利用を検討してください。

払えないときはどうする?住民税・年金の負担を軽くする制度

国民年金には「失業による特例免除」がある

国民年金の保険料の免除や納付猶予は、通常は本人や世帯主・配偶者の前年所得をもとに審査されます。ただし、退職(失業)した方については、本人の前年所得を除外して審査する「失業による特例免除」という仕組みがあります。そのため、前年の所得の額にかかわらず審査を受けることができ、在職中の所得が高かった方でも、退職後に全額免除・一部免除や納付猶予を受けられる可能性があります(世帯主や配偶者の所得は審査の対象となります)。

申請はお住まいの市区町村の年金担当窓口や年金事務所で行います。申請書に、雇用保険の離職票や雇用保険受給資格者証の写しなど、失業したことを確認できる書類を添付して提出します。

制度 内容
全額免除・一部免除 保険料の全額または一部が免除される。全額免除の期間も、老齢基礎年金の受給資格期間に算入され、年金額にも一定割合(国庫負担分)が反映される
納付猶予(50歳未満) 保険料の納付が猶予される。受給資格期間には算入されるが、年金額には反映されない
追納 免除・猶予を受けた期間の保険料は、10年以内であればあとから納めて年金額を増やすことができる

免除や猶予を受けた期間は、障害基礎年金などの受給要件を判断するうえでも「未納」とは扱われません。払えないときこそ、申請しておくことが大切です。

住民税は、まず自治体の窓口に相談を

住民税の支払いが難しい場合は、納期限を過ぎる前に、お住まいの市区町村の税務担当窓口に相談しましょう。事情に応じて、分割での納付や、一定の要件のもとで納付を猶予する制度を利用できる場合があります。また、失業などにより所得が大きく減少した場合に、住民税を減額・免除する独自の制度を設けている自治体もあります。

一方、何の連絡もせずに滞納を続けると、延滞金が加算されるほか、最終的には財産の差し押さえにつながるおそれもあります。「払えない」と感じたら、一人で抱え込まず、早めに窓口へ相談することが何よりも重要です。

所得税は「確定申告」で戻ってくる可能性がある

年の途中で退職し、その年のうちに再就職しなかった場合は、会社で年末調整を受けていないため、毎月の給与から差し引かれていた所得税が多めになっていることがあります。この場合、翌年に確定申告を行うことで、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。確定申告には会社から受け取る源泉徴収票が必要になるため、退職時には必ず受け取れるよう手配しておきましょう。

退職代行を使う場合に押さえておきたいポイント

退職代行を利用して退職する場合でも、住民税や年金の手続きの流れ自体は変わりません。ただし、会社と直接やり取りをしない分、次の点をあらかじめ意識しておくと安心です。

  • 退職後に必要な書類の送付を依頼しておく:源泉徴収票、離職票、健康保険の資格喪失証明書などは、住民税・年金・健康保険・確定申告の手続きで必要になります。退職の意思とあわせて、これらの書類を自宅へ郵送してほしいという本人の希望を会社へ伝えてもらいましょう。
  • 住民税の徴収方法についての希望を伝えておく:6月以降に退職する場合に、残りの住民税を最後の給与から一括で差し引いてほしいといった希望があれば、あわせて会社へ伝えてもらうことができます。
  • 退職日がいつになるかを確認しておく:退職日によって、退職した月の年金が厚生年金になるか国民年金になるかが変わります。有給休暇の消化期間も含めて、最終的な退職日を把握しておきましょう。

退職代行サービスは、運営元によって対応できる範囲が異なります。

運営元 できること
弁護士 未払い賃金の請求や退職条件をめぐる交渉など、すべての法的代理行為が可能
労働組合 団体交渉権にもとづき、退職日や条件について会社側と交渉できる
民間業者(社労士運営・監修含む) 本人の退職の意思・有給消化の希望・必要書類(離職票・源泉徴収票・資格喪失証明書など)の郵送の希望などを会社に伝達する「使者」としての役割。会社との交渉はできない

会社が書類の発行を拒んだり、未払い賃金の請求が必要になったりするなど、会社との交渉が必要な場合は、弁護士や労働組合の対応領域となります(弁護士法第72条により、弁護士でない者が報酬を得て法律事務を取り扱うことは禁止されています)。

なお、退職代行として行うのは、あくまで本人の希望を会社へ伝える「伝達」です。国民年金や国民健康保険の切り替えなど、退職後の行政機関への届出を本人に代わって行うものではありません。これらの手続きはご本人が市区町村の窓口などで行うことになります。

一方、社労士が運営・監修するサービスでは、退職の意思の伝達に加えて、退職後の住民税・年金・健康保険・雇用保険といった手続きについて、専門的な立場からアドバイスを受けられる点が強みです。

まとめ

退職後は、これまで会社が給与から天引きしていた住民税や年金保険料を、自分で納める必要が出てきます。住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後しばらくは在職中の所得にもとづく請求が続き、退職する時期によって一括徴収か普通徴収かが変わります。年金は、次の就職まで期間が空く場合、退職日の翌日から14日以内に国民年金への切り替え手続きが必要です。

支払いが難しいときは、国民年金の「失業による特例免除」や、住民税の分割・猶予などの制度があります。大切なのは、未納や滞納のまま放置せず、早めに手続きや相談をすることです。あらかじめ流れを知っておけば、「忘れた頃に届く請求」に慌てることはありません。退職後の手続きを一つずつ整えながら、まずは心と体を休めることを優先してください。

あなたの新しい一歩を支える「退職代行リブート」

「会社を辞めたいけれど、辞めたあとのお金や手続きのことを考えると不安で動けない」「会社と直接やり取りをせずに、必要な書類だけはきちんと受け取りたい」という方は、ぜひ一度「退職代行リブート」にご相談ください。

退職代行リブートは社会保険労務士が運営しており、あなたに代わって退職の意思や有給消化の希望、源泉徴収票・離職票などの必要書類の送付依頼を会社へ伝達する(使者としての役割)とともに、退職後の住民税・年金・健康保険・失業保険などの手続きについてのご相談もお受けしています。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。住民税の納付方法や減免制度、国民年金の保険料額・手続きの詳細は、お住まいの自治体や年金事務所、日本年金機構の最新情報をご確認ください。個別の法的紛争や個別具体的な判断が必要な場合は、必要に応じて専門機関にご相談ください。

監修:社会保険労務士 福岡泰弘(登録番号:14200009)